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Organization chart story組織図は語る

Organization

組織図は語る

組織図が、会社の実像を語っていることを知っていますか?

組織図とは、「組織の基礎となる活動や業務の流れの全体像を目に見える形で表したもの」です。 と同時に、組織図は、見方次第では経営情報の宝庫であり、「会社の現状と将来を表す鏡」であると言うことができます。 ここでは、当社で分類・整理している数ある類型の中から2つの組織図をピックアップし、その特徴や問題と改善の方向性について紹介します。

Case 1間接部門未機能・混乱型

  1. 社員数約80人の設備関連機械の製造・設置・工事等を行う中小企業である。
  2. A~Cの各事業部は、製品の大分類的な種類で分かれている。
  3. 元々はB製品製造を行っていた。
  4. その後、若干機能の異なるA・C製品群の投入で事業が拡大。
  5. どの事業部の製品も基本的に大型で、設置にはノウハウを要する。
    それぞれ独自の工事やメンテナンスも必要であり、自社で一通りの対応が可能。

X社の組織図

X社の組織図

映し出される『問題点』はこれだ!

問題点1

自社の経営計画は、もっぱら予算数値と部署別の課題等で構成されている

A事業部所属の「品質保証部」「資材部」、B事業部所属の「工事部」は、それぞれ他の事業部にも必要な役割であるにも関わらず、他の事業部内には同職務を行う部署がないことから、業務の分担や連携に問題を引き起こすこととなってしまいます。 共通(間接)機能の曖昧な組織編成は、部門間の効果的な連携を通した自社商品やサービスの提供の阻害要因となるばかりか、部門の業績把握の観点からも不透明さをもたらすことになるでしょう。そして、不透明さの弊害は、単に業績の把握といった人事制度や管理会計的な問題以上に、もっと本質的で深刻な「顧客」の不満足という形で跳ね返ってくることを認識しておく必要があるでしょう。

問題点2

X社の場合、事業部制的な組織体系が事業を混乱させている可能性が高い

X社はA~Cと各々3つの事業部に区分されており、3つの事業部門がそれぞれ営業機能を持っています。この会社の3事業部で扱う製品が各々性質や市場の異なるもので、それ程 事業部間のシナジーを活かす必要のない製品であれば、事業部制がフィットするかもしれません。しかし、各事業部の製品がシナジーを活かす上でも共通的に販売すべき要素が大きい場合は、事業部別に営業担当者を個別に重複して抱える営業活動は非効率となる可能性もあります。こうした、組織編成上の考え方は、会社の取り扱い製品・サービス、ドメイン(事業領域)、基本戦略とも深く関係するものであり、経営戦略の再確認と検証が欠かせないものとなります。

問題点3

人事評価制度等「人財に関わる仕組み」が十分に機能していない可能性が高い

「問題点1」でも確認した、全社機能であるべき間接部門が特定の損益事業部の下に組み込まれているような問題がある場合には、戦略実行の成果を図る「部門業績評価制度」が十分に機能していない可能性が高いといえます。 部門業績が十分に評価できなければ、個人の成果の把握も十分に行えない、行っているとしてもそれが会社の戦略に適切に連動しているかは疑問であると言わざるを得ないでしょう。

問題点4

一部一課の問題が引き起こす組織・人事制度上の問題

一部一課とは、組織図にある総務部と総務課のように、部と課の関係が1対1(一部一課)であることを指します。 もともと、10人だった「部」の中で、課長クラスに昇格した人が「課長」と呼ばれるようになるといったケースのように、課長という呼称に合わせて課が設定されるようなものが、このケースにあたります。このような場合、「各組織の役割と使命は何かがはっきりしていない」「職位や資格等社内の人事制度面が制度疲労を起こしている可能性がある」「環境変化への対応の遅れや、変化を好まない保守的な会社の風土につながる可能性もある」などの問題をはらんでいる可能性が指摘できます。

問題点5

かつての会社の成長を支えていた強みが、弱みに転換する可能性に注意

設計から製造・設置・施工・サービスまで自社で一通り対応できるということが、今まではX社の強みと言えましたが、事業拡大とともに上記にも示したような社内における部門部署の十分な機能連携が行えず、顧客からのクレームが発生し、満足や評価を得られなくなってしまうということに発展する可能性も否定できません。かつての強みが戦略や組織体系によって一転して弱みに転換してしまうことになりかねませんので注意が必要です。

改善と対策の方向性

会社の将来像と戦略の具体的な計画化に加え、立案した戦略推進に寄与する必要組織の機能(業務の整理)やミッションの検証・検討がきわめて重要となります。 また、こうした会社の場合、複雑な指示命令系統と曖昧な役割や仕事の分担で、意思決定のスピード・権限委譲等で問題が発生したり、変化を好まない、保守的な風土が形成されていることが考えられます。 「守りの風土」は環境変化の早く激しい現代においては、戦略推進上の阻害要因となる要素が多いのも事実です。こうした点を改善していくことで、新たな会社の成長を実現していくことも可能となるでしょう。

Case 2非効率内在型

  1. 社員数約100人の中古車を中心に自動車の販売・修理等を行う会社。店舗数9店。
  2. 近年、既存店の売上・利益ともに低下傾向にあり売上減少を新規出店で賄う状態。
  3. 社長のモットーは、『顧客志向の実践』と、『営業に結びつかない管理間接部門はスリム化し無駄を省く!』である。Y社のスタッフ部門は総務部の3人。
  4. 仕入れは、店ごとに個別に行っている。各店の営業担当者が個人ごとに仕入れを行ったり、各店が同じ仕入先から個別に仕入れることも多い。
  5. 各店の営業(サービス)は、担当顧客への膨大なDM書き等で残業も多い。
  6. 店舗業績については、そもそも出店場所が悪い、という声もある。
    出店は業者から持ち込まれる物件の中から、社長と専務で選定しており、他に携わっている人はいない。

Y社の組織図

Y社の組織図

映し出される『問題点』はこれだ!

問題点1

効率化の中身を勘違いしている可能性が高い(本当の効率化とはなにか?)

この状況から見ると、Y社には総務の他に仕入や出店戦略を具体化するような機能が必要と考えられます。しかし、社長のスリム化方針の下、仕入や営業事務の集中化等の必要な間接機能が営業部門の中に埋没・分散し、担当部署に人員を配置するよりも実際は多くの社員が当該業務に関わっているといった見えないコストが全社的な非効率を招いている可能性が高いといえます。「仕入れの非効率」「店舗運営の非効率」「店舗展開の非効率」「経費・人財活用・連携の非効率」等について、早急に検証してみることが必要でしょう。

問題点2

組織階層のフラット化を誤解している可能性が高い

権限委譲は、組織編成や運営における重要なテーマですが、それは、単に組織図上の階層を減らせば良いというわけではありません。Y社のように、10店舗近くまで店舗数が増えてくると、店舗戦略や業績のコントロールという意味においては、販売店を単純に横並びにさせておく組織配置は限界に近づいているかもしれないと考えた方がいいでしょう。

問題点3

今後「顧客の不満足」を招いてしまう可能性が高い

問題点1で確認した間接部門の比重の少なさや、問題点2で確認した組織のフラット化により、いろいろな問題が発生しているといえます。 仕入れの手間やDM手続き等で残業が多いのもこれらの影響による部分が大きいためと考えられます。そのため、営業活動に注ぐ体力や時間が減少し、顧客との効果的・効率的コミュニケーションがとれないことで、顧客との関係性が薄れ、営業担当者のモチベーションの低下にもつながりかねません。こうした懸念は、今後店舗が増加していくことにより、更に深刻な問題となっていく可能性も考えられます。

改善と対策の方向性

管理・間接部門の肥大化をよく「大企業病」などと言いますが、逆に、管理間接部門をできるだけスリム化して、無駄を省く等、組織効率や営業強化等にとらわれ、無駄を省いたつもりが、かえって無駄を内在させた組織になってしまうということも十分認識することが大切です。 真の効率化を理解するためコスト構造をはじめ、会社の現状を十分に分析し、中期的な経営戦略の策定や再確認を行ったうえで、組織の機能(業務)の整理・検証を行ってみましょう。管理・間接部門の役割を整理した上で、リーダーの役割・能力像を明確化し、人財育成を図っていくことも大切なポイントとなります。

植田正樹著者「成長企業の戦略・組織・人財’」
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